塩と健康の関係
塩と健康は切っても切り離せない関係にあります。塩がなくては、身体はあっというまにダウンしてしまいますし、
かといって、塩分の摂りすぎも身体によくありません。
健康のためには、塩との正しいお付き合いが大切なのです。
塩は植物性食品? 動物性食品?
まずは、簡単なクイズから。
私たちの食べるものは、植物性食品か動物性食品に分類されますが、
それでは、塩はいったいどちらにはいるでしょうか?
それでは、塩はいったいどちらにはいるでしょうか?
実は、すべての食品の中で唯一、
塩だけがそのどちらにも属さない食品なのです。
塩だけがそのどちらにも属さない食品なのです。
塩の成分は、ナトリウムなどのミネラル。日本で造られる食塩は、基本的に海水を濃縮して煮詰めたものですから、植物由来でも動物由来でもありません。砂糖の原料が植物なのに比べて、ずいぶん変わっていますね。
ちなみに、ナトリウムは私たちの身体に必須のミネラルです。また、これだけ科学の発達した現代でも、塩に代わるものを人工的に造り出す方法はありません。砂糖や酢の成分は、ほかのものでも補給することができます。しかし塩だけは、代用のきかない、地球上に唯一無二の食品なのです。また味覚的にも、人の塩に対する要求はひときわ強いことが知られています。塩は、栄養的にも味覚の上でも代わるもののない、かけがえのない食品なのです。
塩が足りないとどうなるの?
でも、ただ「かけがえのない食品」といわれても、いまひとつピンときませんね。もう少し具体的に、塩が身体の中でどんな働きをしているのか、そして塩が足りないとどうなってしまうのか、ということを見てみましょう。
人の身体の中には、常に一定の割合で塩分が含まれています。この塩分が、生命に直結する大切な働きをしています。タンパク質や脂肪が身体を動かすエネルギー源になるのに対して、塩の役割は、体内のいろいろなシステムの働きを守り、維持すること。つまり塩が足りないと、身体のあちこちが故障して働かなくなってしまうわけです。
細胞を正常に保つ
塩は、私たちの身体の中の血液・消化液・リンパ液などの体液に、イオンの状態で溶けています。そして、細胞の内と外との体液の圧力(浸透圧)を調整し、バランスを一定に保つ働きをしています。実はこのバランスが、食べ物から栄養素を吸収するためにとても重要なのです。どちらに傾いても、栄養を体内に取り込めなくなってしまいます。塩を正しく摂らないと、循環不全、血圧低下、脱水症状、ショック症状や立ちくらみ、むくみなどにつながります。また新陳代謝も衰えるので、お肌にも良くありません。
神経や筋肉の働きの調整
私たちが身体を動かす時、脳からの命令が電気信号として神経細胞を伝わっていきます。この電気信号を伝える働きをするのが、塩の成分であるナトリウムイオンです。塩が不足するとこの伝達がうまくいかなくなるので、体調不良などを引き起こします。夏の暑い日に激しい運動をすると足がつったりしますが、これも、汗をかいて身体のナトリウムが極端に不足した結果です。
食欲や味覚の正常化
適切な塩味は食欲を増進させます。また塩味の刺激によって、おいしさを感じる正常な味覚が保たれています。あまりに塩気のない食事を続けると、ナトリウムや塩素の不足によって引き起こされる実際の問題に加えて、味覚もにぶくなるため食欲も落ちてしまいます。すると、体力が衰えて、さらに食欲が落ち・・・と悪循環に陥ります。
いかがでしたか? そのほかにも塩は、身体が酸性になるのを防いだり、消化と吸収を助けるなど、様々な働きをしています。塩はさながら、健康のマルチプレイヤー。多すぎず少なすぎず、良い関係を保つことが、健康のためには一番なのです。
塩と健康の関係
以前はよく、「塩は高血圧の原因」といわれてきました。しかし近年では、塩の摂取と血圧の上昇はかならずしも結びついていないことが明らかになってきています。このことは専門的には「食塩感受性」「非感受性」という言葉で表現されます。塩の摂取量によって血圧の上下動が見られる人が「食塩感受性」、これに対して、塩の摂取と血圧に関係の見られない人を、食塩に対して「非感受性」というのです。
高血圧対策として減塩が効果的であるのは、全体の4 割程度といわれる「食塩感受性」タイプの人のみ、ということになります。それ以外の場合は、効果が期待できないばかりか、減塩による健康への悪影響もありえますので注意が必要です。
「適塩」って、どのくらい?
それでは、いったい塩は1 日にどれくらい摂ればよいのでしょう? 厚生労働省は「適正な食塩摂取量」として、健康な人の場合、「成人1 日10 グラム以下が望ましい」と発表しています。ちなみにこれは、塩に対する感受性の違いを含まない、一律の目安として発表されているものです。ですからすべての人にこの数値を適用するのはあまり意味がないのですが、少なくとも食塩感受性の人に関しては、この数値を守ることが望ましいと考えられます。イメージで、極端な減塩やその逆に走るのではなく、正しい情報に基づいて適切な分量を心がけたいですね。